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真岡・警察 [記事]

真岡警察の動き


 この真岡の混乱の中で当時、駅前交番に勤務、かたわら鑑識の仕事していた宮崎行雄巡査、同署経済課油槽係、笠原辰巳さんらの話を綴ってみた。

 宮崎さんと笠原さんが非常呼集を受けたのは20日5時半頃、石浜町の下宿から走って本署に駆け込んだのは同45分だった。三浦春美署長らはすでに署内にあり、使丁さんは大きい釜で飯を炊き、味噌汁を煮ており、到着した者には次々小銃と弾丸920発ずつが配布された。署員は飯を飯ごうにつめ、鉄兜を背にくくりつけ、緊張した面持ちで署長、木村警防主任らの訓示を受けていた。

 ソ連軍はいずれ上陸を企てることは予想していたから、その場合、住民を誘導避難させ、ときによっては最後の抵抗を試みるための準備と分担はあらかじめ決まっていた。また住民の避難を指導するために警防団や消防署の幹部も同時に呼集されていた。

 不気味な弾道音が、突如、建物を振るわせるように飛んだのはそのときだった。そして、やがて海岸線に近づいたソ連の自動小銃弾が厚いコンクリートの壁に当たって跳ね返り始めると、本庁から南浜町にかけての路上には、町民が飛び出してきた。防空壕や家の中の防空室に隠れたものの、銃砲声が一段と強まり、ソ連軍の上陸が始まると恐怖がつのって逃げ出したのであろう。一部の署員は小銃や鉄兜を隠すと逃げまどう人たちを誘導するためばらばらと弾雨の中かけだしていったが、ソ連軍の銃砲火はその頃からひときわ激しくなった。

 徹甲弾のような大きな大きな弾丸が飛んで来始めた厚い庁舎の壁がみるみるうちに打ち砕かれ、崩れ落ちていった。

 宮崎さんは交換室に危険を避けて飛び込むと、警防員や同僚警察官がすでにぎっしりで、交換台の影などに隠れていた。もう下混む余地がないと判断すると、慌てて庁外に走り出て 防空壕に潜り込んだ。その豪は庁舎の前のアスファルト舗装の下をくりぬいたもので、その濠内では三浦署長と近村義治義治巡査部長、川崎伸宏巡査部長、鈴木稔巡査、ら八人が身を潜めていた。

 ソ連兵は警察署付近に進出してきた。豪の出入り口の蓋をかすかに持ち上げてみると、署の前の消防本部内にソ連兵がすでに侵入、3台のポンプ車を引き出し石油の一斗缶を積み上げている。焦土戦術かと見ているうちに、兵隊が乗って走り出した。木造の家に石油をかけて火を放ったのであろう。やがて、豪から見回す街は火の海と化した。黒煙の中から吹き出すような炎が、音を立てて家々を焼いていった。

 「どうする」三浦署長を中心に八人は、この危機をどうやってくぐり抜けるか、額を寄せて話し合った。しかし、脱出するにしても付近はすでにソ連軍に占拠されているに違いないし、このままでいては、いつかソ連兵に発見されて皆殺しになるでしょう。・・決断が容易に付かなかった。そのとき、川崎部長が「署長、私に任せてください」と申し出た。

 署長の許可を取った川崎部長は、豪の蓋をわずかに開けて、周囲の様子をうかがっていた。しかし、火勢も見る間に激しさを増し、川崎部長も飛び出すことができず、脱出の機会を失って壕内に身を潜ませているしか方法がなかった。

 宮崎さんは「私達はもう駄目だと思った。そして、死が目の前にぶらさがっているとなると、それまでの恐ろしさが消えてしまってただ無性に眠くてどうにもならなかった」と、不思議なそのときの心理を語っている。いつの間にか、みんなが座ったまま、うつらうつらとしていた。しかし何かの気配を感じたらしい一人が、壕の蓋をわずかに押し上げて外を見て将校と兵10人ぐらいが巡察しているのに気づいた。

 不安な数分、アスファルトの歩道を歩いて来るソ連兵が、壕の蓋の上に脚をかけると「ガタ、ガタ」と音がした。何か言い合うような声がする。

 息をのむ一瞬、ガタンと音がして蓋が開かれた。兵隊が着剣の先でこじ開けたのである。パッと飛び込んできたで、眠っていた人たちは目を開けた「パパーン」三、四発、壕内に向けて自動小銃が撃ち込まれた。

 「ウーッ」見ると入り口のそばにいた藤井巡査が倒れかかりながら、、何か言おうとするようにして口を動かした、川崎部長らが慌ててその口を手で押さえた。銃弾の一発は藤井巡査の左腕を貫通、一発は体内に入った。

 傷口を上にして同巡査の体を横たえ、ハンカチや手ぬぐいを集めて、あふれる血を押さえると川崎部長は、その耳元に口を当てて、「藤井、声を出すな。傷はたいしたことがない、すぐ手当てをしてやる」。声を出すよみんながやられるぞ」と声をころしてささやいた。

 樺太警友会名簿によると、同署員の死者は9名となった。

  金子俊男著 樺太終戦記録より


 スズランの実
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 モミジアオイ
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 オオハンゴンソウ
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 ヒメヒマワリ
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 ノコンギク
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mimimomo

おはようございます^^
戦争を知らないわたくしからすると、まるで映画のひとシーンのようなお話ですが、現実なのですよね。その場面に居合わせた方たちの心持はどんなだったか、身の毛がよだちます。

スズランの実、我が家では見かけたことがないです。
by mimimomo (2017-09-30 06:27) 

くまら

スズランってこんな実が付くんですね
by くまら (2017-09-30 12:20) 

Take-Zee

こんばんは!
スズランの実なんて初めて拝見しました!!

by Take-Zee (2017-09-30 18:26) 

raomelon

スズランの実、初めて見ました
真赤で可愛いですね^^
ノコンギクは、清楚で可愛らしい(*'ω'*)
by raomelon (2017-09-30 20:15) 

ヤッペママ

2枚目のオオハンゴンソウは蝶が飛び交っているようで
楽しそうな印象です。
by ヤッペママ (2017-09-30 20:19) 

アールグレイ

スズランの実、初めてみました。
赤い実なんですね^^
by アールグレイ (2017-09-30 20:45) 

JUNKO

秋らしいお花がたくさんですね。
by JUNKO (2017-09-30 21:36) 

きまじめさん

私もスズランの実を初めてみました。
花の大きさから想像して、きっと実も可愛いくて小さいのでしょうね。
by きまじめさん (2017-09-30 23:21) 

旅爺さん

小銃と弾丸920発は重くて戦闘どころじゃないですね。
そんな激戦地でも花は咲いてたんでしょうね。
by 旅爺さん (2017-10-01 13:46) 

U3

実家の庭にスズランは一杯咲いていたので赤い実も見ています。
改憲を叫ぶ人達に冒頭の話を見て欲しいと思う。
by U3 (2017-10-01 13:51) 

kohtyan

死の恐怖が極限まで来ると、恐ろしさが消えて、眠くなるというのは
理解できませんが、人間の心理とは、そういうものなのでしょうか。

by kohtyan (2017-10-01 17:33) 

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